朝起きたら、首が痛かった。
寝違えたのかと思ったが、どうも違うらしい。
原因を考えてみると、たぶん枕のせいだ。
ここ1週間ほど、枕の向きを逆にして使っていた。
私が使っているのは、S字カーブをした低反発枕だ。
もう3年ほど使っているが、特に不満なく眠れていた。
ところがあるとき、自分がその枕を「逆向き」で使っていたことを知った。
枕の低い方が頭側で、高い方が首側。
それが正しい向きらしい。
それを知ったとき、私は少し衝撃を受けた。
これまでずっと、間違った向きで寝ていたのか、と。
その日から、枕を正しい向きで使うことにした。
これで本来の心地よさを味わえるかもしれない。そんな期待を抱いて眠りについた。
しばらくの間は、特に変化はなかった。
しかしある朝、目が覚めると首が痛かった。
前日は会社の研修で長時間姿勢を正していたから、そのせいかもしれない。
ただ、数日たっても同じ痛みが続き、枕の向きを元に戻すと少し楽になった。
どうやら、この枕の「正しい使い方」は私には合わないらしい。
取るに足らないことだが、これは小さな発見だった。
世の中には、「正しい方法」がたくさんある。
勉強にも、仕事にも、料理にも、そして枕にも。
もちろん、「正しい方法」は役に立つ。
たとえばカレーだって、基本の手順を守って作ったほうが、だいたいおいしくなる。
でも「正しい方法」でやったからといって、必ずしも良い結果が得られるとは限らない。
私はレシピ通りにカレーを作っても、なぜか味がとげとげしくなる。
どうしてだろう。これも私に合わない「正しさ」の一つなのかもしれない。
その一方で、「間違った方法」から面白い結果が生まれることもある。
ある科学者は、実験の手順を間違えたことがきっかけで、電気を通すプラスチックを発見したという。その研究は、のちにノーベル賞につながった。
そうして生まれた結果が、後から「大発見」や「イノベーション」と呼ばれることもある。
どうやら、方法の「正しさ」というものは、結果の後から決まるらしい。
それがうまくいけば「正しい方法」になるし、うまくいかなければ「間違った方法」ということになる。
そして、今は「正しい」とされていることが、いつか「間違い」になるかもしれないし、その逆もまたあり得る。
歴史を振り返れば、そうしたことはこれまでに何度も起きてきた。
そう考えると、誰かが決めた「正しさ」に無理に合わせるよりも、自分がしっくりくるやり方に従うほうが、生きていてラクなのかもしれない。
少なくとも、枕で首が痛くなることはなさそうだ。

