「生きた知識」を得るために大切なこと |『学びとは何か――〈探究人〉になるために』今井むつみ

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学びとは何か?

私たちは生まれてから今日までに、様々なことを学んできました。しかし、いざ「学びとは何ですか?」と尋ねられると、どう答えたらいいのか迷ってしまいます。

学びとは何か――〈探究人〉になるために』は、認知科学者の今井むつみ氏によって書かれた「学びの本質」を探究する一冊です。

記憶とは何か。知識とは何か。そして、学びとは何か。これらの根源的な問いに対して、認知科学という視点から迫っていきます。

本書を通して、これまで漠然と捉えていた「学び」について深く理解することで、自分に合った「よい学び」を考えるヒントが得られるかもしれません。

目次

『学びとは何か――〈探究人〉になるために』の情報

  • 著者:今井むつみ
  • 出版社:岩波書店
  • 刊行日:2016/03/18
  • 新書:254ページ

Source:岩波書店

まいたぬき

今井むつみ氏は、認知心理学、発達心理学、言語心理学を専門とする日本の認知科学者です。

「死んだ知識」を「生きた知識」に変えていく

本書は「学びの本質」について科学的に考察された良書です。内容もとても面白い!

ただ、内容をすべてを説明するのは難しいので、今回は特に印象に残った部分をご紹介します。

本書のポイントは、以下の2点です。

  • 「よりよい学び」とは、学んだ知識を「生きた知識」にすること
  • ただ知識の断片を蓄積するのではなく、知識をシステムとして作り上げること

認知心理学では、「知識」は「生きた知識」「死んだ知識」の2種類に分けられます。

「生きた知識」とは、状況に応じて自由に使いこなせる知識のことです。たとえば、私たちは母語である日本語を自由に話すことができます。これは日本語を「生きた知識」として習得しているからです。

一方で「死んだ知識」は、ただ事実の断片として記憶されているだけで、実際には使えない知識のことです。たとえば、英語は単語や文法知っているのに、実際に会話するのは難しいです。これは英語の知識が「死んだ知識」として脳に蓄積されている状態といえます。

このような「死んだ知識」を「生きた知識」に変えていくことが、「よりよい学び」につながるのです。

「知識は教えてもらうものではなく、自分で発見するもの」

では、「生きた知識」を手に入れるにはどうすればよいのでしょうか? 今井氏は次のように説明します。

日本語なり、英語なり、どのような言語でも、言語を使うにはその言語の音、文法、語彙について知識がなければならないが、それぞれの要素についてどんなに多くの知識を持っていてもそれだけでは言語は使えない。それらの要素の知識が互いに関連づけられたシステムになっていなければならない。

今井むつみ『学びとは何か-〈探究人〉になるために』P.40

つまり、知識を「事実の断片」として記憶するのではなく、既存の知識と結びつけ、知識全体が一つのシステムとして機能するようにつくられる必要があるということです。

たとえば、英語を「学校の勉強」や「資格試験対策」として取り組むのではなく、一つの「ことば」として実際に使ってみることで、日本語訳と英文の一対一対応の知識ではなく、より実践的な「生きた知識」として定着させることができます。

もちろん、最初は冠詞の使い方を間違えたり、文法の誤り多く発生すると思います。しかし、頭で考えるだけでなく、実際に使ってみることで、自分だけの新しい知識を発見することができます。

知識は教えてもらうものではなく、自分で発見するもの(P.203)という考え方が、本書の根底にある知識観(エピステモロジー)だと思います。

『学びとは何か――〈探究人〉になるために』の次に読みたい一冊

個人的に次に読みたいのが、本書と同じく今井むつみ氏によって書かれた『英語独習法』です。

認知科学者による英語学習の指南書ということで、どのような内容なのか気になります。

Amazonのレビューによると、本記事ではご紹介できなかった「スキーマ」(心理学用語で、行間を補うために使う常識的な知識のこと)について詳しく書かれているとのこと。

認知科学的に”正しい”方法で英語の勉強をしたいという方は、ぜひ読んでみてください。

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